この記事は、以前運営していた別ブログから2024年10月に追記して転載したものです。
新生児聴覚スクリーニング検査でリファー(要検査)と言われたら、「これからどうすればいいの?」と不安ですよね。
我が家の息子も、産後2日、5日、2週間健診、すべてで両耳リファーでした。
さらに、2週間健診ではお医者さんに息子の耳が「残念ながら聞こえていない」とまで言われました。
ですが、その後の精密検査で問題なしということがわかり、現在は聴覚に心配のないまま成長しています。
新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになって不安な方に少しでもわたしの経験談が希望になればと思い記録を残しています。
- 新生児聴覚スクリーニング検査とはなにか
- 病院の聴覚精密検査はどのようなものか
- リファーを受けたらどうしたらいいか
この記事を読めば、わたし自身の体験談を踏まえて、新生児聴覚スクリーニング検査リファーから病院で聴覚の精密検査を受けてパスするまでの流れがすべてわかるように書いています。
公開から2年近くたっているにもかかわらず、いまだにリファーを受けて不安な方からメッセージいただきます。
1人で考え込むより楽になるので、不明点があれば気軽にコメントや問い合わせくださいね!
※息子は最終的に検査をパスして「難聴疑いなし」となっていますので、そのことでつらくなると思う場合は決して読まないでください。
新生児聴覚スクリーニング検査とは?
まず、「新生児聴覚スクリーニング検査ってなんだかよくわからない!」という方にめちゃくちゃ簡単に説明しますね。
すでによくわかっている方は下のボタンを押してスキップして、わたしの息子が両耳リファーになったところから読み始めてください。
新生児聴覚スクリーニング検査とは?
新生児スクリーニング検査とは?
難聴児の早期発見を目的に行われる耳のきこえのスクリーニング検査です。
早期発見により、難聴児も早い段階から補聴器(または人工内耳)を装着して適切な療育や教育を受けることができまるというメリットがあります。
検査は簡単なもので、赤ちゃんが寝ている状態で実施されて、異常がなければ5~10分で終わります。
リファーとは、この簡易的なスクリーニング検査でパスできず要精密検査となることです。
新生児聴覚スクリーニング検査は日本ではまだ義務づけされていないため、出産した自治体で補助がない場合は有料です。
うちの自治体では補助が出て無料でした。各自治体に問い合わせくださいね
新生児聴覚スクリーニング検査リファーの確率
新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになってその後に精密検査までする赤ちゃんは年間約4,000人(国内出生数0.4%にあたる)。
そのうち、精密検査をへて約1,000人(国内出生数0.1%)が両耳難聴、さらに同数が片耳難聴と診断されます。
つまり、生まれてくる赤ちゃんの0.4%が新生児聴覚スクリーニング検査でリファー。
リファーになった赤ちゃんが精密検査を受けて難聴が確定する確率は50%です。
実際リファーになった身としては、確率で推し量れるものではないのはわかっていますが…どうしても数字が気になっちゃいますよね!
息子は両耳リファーでしたが、SNSやネット検索をしてみても両耳がリファーになる赤ちゃんはかなりレアで当時(2021年11月)とても不安でした…。
※わたしは医療従事者ではなく、経験談をもとにした記事ですのでご了承ください。
一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会の『新生児聴覚スクリーニングマニュアル』を参考にしています。
医師、看護師、助産師さん向けのマニュアルですが、一般人が読んでもとっても読みやすいです。
新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーに
前期破水からの陣痛促進だったものの、スーパー安産で生まれてきてくれた息子。
どのような経緯で新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーになったのかを記録しています。
生後2日後に両耳リファーになり検索魔に
息子は生後2日の新生児聴覚スクリーニング検査で2時間半たっても帰ってきませんでした…。
お姉ちゃんのときは30分もしないで帰ってきたので「おかしいな。こんな長かったっけ」と思いながら、でもまさか引っかかるとは思わず、待っていました。
息子を抱っこして帰ってきた看護師さんに、「ちょっとうまく検査できなくて反応が出なくて…。でも、羊水がお耳に溜まっていたり眠りが浅かったりすればよくあることだから。気にしないで。また退院日に検査させてね」と言われました。
今考えるとめっちゃ気を遣われている!
看護師さんが去った後、もうここから検索魔になってしまいました。
検索してみると、「よくある」どころか、新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになる赤ちゃんは0.4%しかいないことを知ってしまいました。
しかも、そのうち半数が実際に難聴と診断されると…。
産後のメンタルもあり、もう不安で不安で仕方がなくなりました。
幸せの絶頂のはずだったのに…。
そして、何があっても赤ちゃんを受け入れられると思っていた自分が、そんなに不安になることにも嫌気がさしました。
それからというもの、赤ちゃんの耳元で手を叩いたりプラスチックカップを潰したりしてわざと大きな音を立てて反応を見ていました。
そのとき、ほとんど赤ちゃんの反応はありませんでした…。
幸か不幸か、コロナ禍で面談は一切できなかったため、病室で赤ちゃんと2人きり。
泣いちゃダメ!赤ちゃんと笑顔で接しよう!考えたって仕方がない!
と思っても、どうしても思考が聴覚スクリーニング検査のことで支配されていました。
それでもこのときは、「大丈夫!次の検査は何も問題ないはず!」という気持ちでなんとかもっていました。
その日の夜、お祝い膳が出ましたが、普段食いしん坊のわたしが全然箸が進まなかったのを覚えています。
涙にくらんだお祝い膳は忘れられない!味がまったくしなかった!
生後5日の退院日に再び両耳リファーに
生後5日の退院日、少し部屋を出る時間をのばして再検査をしてもらいました。
検査に同席はせず、病室で一人帰る支度をして待っていたのですが、やはり2時間半くらいかかりました。
おかしい…。「大丈夫でしたよー」ってもう帰ってきてくれてもいいはず…。
ソワソワして何も手につかず待っていると、お医者さん(小児科医)と看護師さん3人がぞろぞろと病室にやってきました。
あぁ、もうこれ絶対ダメだったやつじゃん…
とすぐ思いました。
ハッキリ言ってこのとき何を言われたかは全然覚えていません。
ですが、とにかく「検査を何度かしたけれど脳波に反応がない」ようなことを言われました。
今後どうするかということをいろいろと話されたと思いますが本当に覚えていなくて…。
わたしは平静を装うとしたものの、目から涙がポロポロと勝手に流れてしまい、看護師さん1人が手をさすってくれてとにかく静かに泣きました。
泣くつもりじゃなかったのにごめんなさい
と言ったところ、「大丈夫だよ。心配だよね」と言ってくださいました。
根拠のない励まし(「きっと聞こえてるよ!」など)は一切なかったので、きっとそういうことなんだろうと覚悟が少しだけできた瞬間でした。
メンタル崩壊した新生児期
わたしの夫は単身赴任で飛行機の距離に住んでおり、不安な気持ちを伝えられる人もいませんでした。
そのせいもあってか、退院してからは赤ちゃんの顔を見るだけでポロポロと涙が自然に出てきてしまう状態でした。
おそらく産後の肉体的な疲れもあり、ホルモンバランスの乱れでメンタルも弱くなっていたと思います。
とりつかれたように耳元で音を立てては反応に一喜一憂していました。
お皿洗いの音やカメラのシャッター音にスヤスヤ寝ている息子がモロー反射しただけでものすごく喜んでいました。笑
ですがその数時間後にはお姉ちゃんが大きい声で叫んでも泣いても息子はスヤスヤ寝ているので「あぁ、やっぱり聞こえないんだな…」と落ち込みました。
感情の起伏が激しすぎて自分でついていけませんでした。
あぁ…。こうやって産後鬱になるんだろうな
と思っていました。
夜はうまく寝られず、おそらく毎日の睡眠時間は2時間くらいだったと思います。
今考えると、余計な心配はせずに新生児のかわいさをただ満喫すればよかったです。
ただ、本当に大きな音には反応している様子が見えたので、難聴はあっても軽度または中等度なんだろうなと考えるようになりました。
今振り返ると、この期間が1番つらかったです。
ついに2週間健診で耳が「聞こえてません」と言われる
退院後、お医者さんからは「1カ月健診で再検査をしましょう」と言われましたが、待てず…。笑
2週間健診で再検査をしてもらうことになりました。
その際は検査している息子に同席させてもらえました。
ヘッドホンをつけて、おでこには脳波を計るための電極をつけて、機械につながれていました。
検査は眠っていないとできないので、直前にミルクをたっぷり飲ませて挑みました。
幸い、よく眠ってくれたのですぐ検査を受けることができました。
絶対に今日はパスするはず…
そう思ってとなりで見守っていたのですが、脳波の動きは見ていてもまったく理解できず…。
ただわかるのは看護師さんが何度も検査をやり直していること。
どうして?パスしたらすぐ終わるはずなのに!
始まる前は「10分くらいで終わります」と軽い感じで言われたのに、40分以上はかかりました。
その後「検査は終わりました」と案内され、息子を抱っこして結果をお医者さんのもとへ聞きに行きました。
待合室で待っていると看護師さんがやってきて「今日付き添いの方はいますか?」と声をかけられたので、「母が一緒です」と答えました。
そして、検査結果は付き添いの人が同席することと帰りは運転しないことを指示されました。
いやな予感がしました。
そのまま診察室に案内されて、お医者さんが結果について話をしてくれたのですが、お医者さんの口から出た言葉は…
「残念ながら、聞こえていません。」
ハッキリと言われました。
- 鼓膜はキレイで羊水が耳に詰まって聞こえない可能性は低い
- 生後3カ月で大学病院で精密検査を受けてほしい
- 生まれたばかりの赤ちゃんはまだ脳波が確立されていないので、成長によって検査がパスすることもある
さらに、と説明されました。
産後しばらくは羊水が耳に詰まっている可能性があるとネットで読みましたがその可能性もハッキリ否定されました。
が、もちろん耳には入ってこなくて、このことは同席した母に後から聞きました。
今冷静になって振り返って考えてみると、このお医者さんの言葉にはいくつもの重大な間違いがあります。
- 残念ながら? 難聴は残念じゃない!
- 聞こえていません スクリーニング検査で難聴を確定してはいけない
- 決定的な言葉を先に言う あとの説明は聞ける精神状態ではなくなる
わたしはこの言葉によって打ちのめされ、泣きながら赤ちゃんを抱っこして病院の駐車場へ移動しました。
事情を知る病院の受付の方に「大丈夫ですか?がんばってくださいね!」と駆け寄られて心配されるほどでした。
ちなみに同席していた母は「『どんな結果になっても大丈夫だから』と励ましてあげてください」と看護師さんに言われたそうです。
ほんとみんなが優しくて泣けるの!優しい世界!
新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーになってからやったこと
まず、赤ちゃんになんらかの先天的な障がいが疑われた場合、ほとんどのお母さんは自分のことを責めます。
わたしも妊娠中の生活が悪かったからだと何度も自分を責めました。
せめて片耳だったら…と何度思ったことか。
しかし、泣いてばかりいられないのがわたしの素晴らしいところ!笑
毎日子どものいないところでこそこそ泣いていましたが、昼間は活動的に行動しました。
ただ待つということが性格的にできなくて、気を紛らわせたくて必死だったというのもあります!
新生児聴覚スクリーニング検査でリファーだったときに1番つらいのは、難聴なのか健聴なのかの判断がグレーの期間がとてもつもなく長いことです。
たいていの場合、精密検査は生後3カ月と言われます。
その間にやってよかったことを紹介していきます。
サイトメガロウイルス検査
まずは、ネットの情報をたよりにサイトメガロウイルス感染症の検査をしました。
サイトメガロウイルス感染症とは?
お母さんが妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染した場合、子宮内の赤ちゃんにおよそ40%の確率で感染します(先天性サイトメガロウイルス感染症)。
先天性サイトメガロウイルス感染症の赤ちゃんに症状が出るのは約20~30%で、低出生体重、小頭症、肝炎、難聴といった症状が起こる場合があります。
※ずっと前に感染したサイトメガロウイルスが妊娠中に増殖した場合(再活性化といいます)、40%より低い確率で子宮内の赤ちゃんが先天性サイトメガロウイルス感染症になることもあります。
赤ちゃんが先天性サイトメガロウイルス感染症かどうかは、臍帯血や生後3週間以内の尿から検査することができます。
※採尿による検査は現在は保険適用になりました!
わたしは息子の耳のことがあるまでこの感染症を知りませんでした。
サイトメガロウイルスは、大人が発症してもただの風邪の症状が出るだけだそうです。
とくに幼児の子を持つ妊婦さんは注意しなければ、発症した幼児の唾液や吐しゃ物などを介して感染します。
ちなみに、胎児に影響が出るのは妊娠超初期だけです。
かつては妊娠可能年齢女性の90%の人がすでに抗体をもっていたのですが、環境が清潔になり、現在は抗体保有者が70%にまで減っていると報告されています。
わたしは息子の難聴疑いの後に病院に指示されることはなかったので、自分から産院へ電話をして検査をお願いしましたが、「必要ない」とのことでした。
その理由として、
- 低体重児ではない(3600gあった)
- 早産ではない(39週4日で生まれた)
- 難聴以外の症状が疑われない
とのことで、先天性サイトメガロウイルス感染症である可能性が著しく低いと説明されました。
しかしわたしのハートはそんなこと言われてももう何かしていないと壊れそうでした!
わたしがただならぬ空気を漂わせているからか、看護師さんたちはめんどくさがらずにほんっっっとに優しく対応してくださり、検査を受けられることになりました。
採尿はオムツの中に前張りをしてビニールに抽出しました。
男の子だったので簡単でした。
1週間で結果が出ましたが、その間は心がソワソワして落ち着きませんでした。
結果は、母子ともに陰性。
先天性サイトメガロウイルス感染症ではない、との結果が出ました。
つまり、抗体をもっていない30%の妊婦でした。妊娠中はお姉ちゃんの食べ残しを食べたりしてました…。無知は危険ですね…
※先天性サイトメガロウイルス感染症になっている場合はお薬を飲んで治療する方法があるそうです。
大学病院に精密検査を予約
産院に紹介状を書いてもらい、大学病院で聴覚の精密検査を予約しました。
大学病院は市外で片道2時間くらいかかるところでしたが仕方がありません。
予約が埋まっているとのことで、なんと精密検査の予約を取れたのが生後4カ月を過ぎている時期でした。
もし難聴なのであれば、少しでも早く補聴器で音を入れてあげたいと考えていたので、とても焦りました。
ネットで調べると、生後3、4カ月だと赤ちゃんが検査中にうまく眠れずにデータが取れず後日やり直しになったという体験談がありました。
(※検査は赤ちゃんが寝ている状態で実施されます)
ハッキリ言ってこのグレーな状態がずっとつづくのがイヤだった
市役所に相談
その後、市役所に相談の電話を入れました。
内容は、3カ月以上も待っていられないので精密検査をしてくれる病院が市内にないかという問い合わせです。
わたしは電話して状況を話しながらも泣いてしまうような精神状態だったので、市役所の方が親身になってくれました。
ですが、市内に聴覚の精密検査ができる病院はありませんでした。
どうやらわたしは要注意人物(?)に指定されたようで、産後の保健師訪問と病院での1カ月健診のときに、産後うつに関するアンケート調査に協力しました。
その後も何度か電話があって様子を聞かれるなど、メンタルケアをしていただきました。
とってもありがたかったのですが、新生児聴覚スクリーニング検査リファーの実例があまりないのか、正直それについての有益な情報はほぼありませんでした(ごめんなさい!)。
メンタルの状態もとても悪かったので、定期的な確認の電話は正直少しわずらわしかったです…。
とにかく、「気にしないで赤ちゃんとの時間を楽しんで!」としか言われないの…
ただ、ろう学校に相談するという選択肢を提案していただけたのはとてもよかったです。
ろう学校に相談
市役所に提案してもらい、さっそくろう学校に電話しました。
ろう学校と聞くと、「まだ難聴確定していないのに早くない?」と思ってしまうかもしれません。
ですが、実際は、新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになった親に聞こえの相談を実施しているろう学校は多いです。
※くわしくはお近くのろう学校に問い合わせくださいね。
わたしの場合、電話をしたときに聞こえの相談担当の方が1週間の出張中でした。
にもかかわらず、すぐに出先から折り返しお電話をくださり、いろいろと相談にのってくださいました。
ろう学校の方と電話でお話をさせていただいたことで、本当に本当に救われました!
この電話がキッカケで、わたしの心は確実にポジティブな方向へ進みました。
本当に本当に感謝してもしきれません!
そのときにお話しくださった内容を覚えている限りで掲載しますね。
ろう学校で相談したときの話
新生児聴覚スクリーニング検査でリファーとのこと。おつらいですね。ちゃんと寝られていますか?
まず、新生児聴覚スクリーニング検査というのは、難聴かどうかを検査するものではないということを覚えておいてください。
新生児聴覚スクリーニング検査は聞こえの精密検査が必要かどうかを判断するためのものです。
もし本当に難聴だった場合、早い段階でそれを知って補聴器などで対応することが必要となってくるので、そのために疑いのある子をふるいにかけるためだけに行われるものなんです。
ですから、新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになったからといって必ずしも難聴と確定したことにはなりません。
新生児聴覚スクリーニング検査ではある特定の周波数でしか音を出してテストをしませんが、精密検査では周波数ごとに聞こえの検査をします。
ですから、高い音なら聞こえているけれど低い音だと聞こえないとか、小さい音は聞こえないけど大声程度なら聞こえるとか、そういったことが精密検査でわかってきます。
だからまだ疑いの段階ですので、悲観的にならないでくださいね。
くわしく、ありがとうございます…。子どもはフライパンを落とした大きな音にモロー反射をしていたんですが…
そうなんですね!それはすばらしいじゃないですか。
そしたらもしかしたら大きな音は聞こえているかもしれませんね!
ところで、親戚や近くの人で難聴の方はいらっしゃいますか?
1人もいません…
そうなんですね。まわりに難聴の方がいないと未知のことだからすごく不安になるんだと思います。
それは当然の感情ですから自分を責めないでくださいね。
でも大丈夫ですよ。
わたしの妻の耳はまったく聞こえていないのですが、今とても幸せに生活しています。
子どもにも恵まれて、わたしもとても幸せです。
ここにいるお子さんたちも、補聴器をつけたり人工内耳をつけたりしながら頑張っていますよ。
もしお子さんが今後本当に耳が聞こえづらいということがわかったとしても、わたしたちスタッフが全力でサポートしますから、いくらでも方法はありますから安心してくださいね。
だから今は新生児期という尊い時間をただ思いっきり楽しんでください。
もし音が聞こえていないとしても、お母さんが話しかければ波動が伝わりますから。
赤ちゃんは気持ちを受け取ってなによりうれしいんですよ。
お母さん、大丈夫ですよ。
電話でお話を聞きながら泣きました。
ひとつひとつ言葉を選びながら、寄り添ってくださいました。
息子が難聴疑いをもって生まれてきたのは、わたしが知らないこういった優しい世界を見せてくれるためなんだなとそのとき本気で感じました。
そうか、その世界を知らないから怖いのか…と納得しました
最後に、ろう学校の担当者さんは紹介状なしで聞こえの精密検査ができる個人病院を教えてくれました。
一般的に新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになったとき、「生後3カ月くらいにならないと耳から脳への伝達が未熟で正確なデータが取れない」と言われると思います。
この3カ月待つという行為が、リファーを受けた親にとって本当につらく苦しいものになります…。
ですが、そのろう学校の先生のお話によると、生後1カ月でも十分正確なデータは取れるとのことです。
※これについては専門家によって見解が異なると思うので、ただの個人の体験談として捉えてください。
個人病院で精密検査を予約
すぐに個人病院で聴覚の精密検査を予約したところ、生後1カ月で取ることができました。
正直「精密検査をすれば難聴が確定してしまうのではないか」と不安に思う部分もありました。
そのため、何度もキャンセルしようとしたり、「やっぱり大学病院の精密検査まで待ったほうがいいんじゃないか」と夫に相談したりしていました。
1カ月半で精密検査をしても結果がグレーで、さらに悩みが増してしまうのではないかとも考えました。
ですが、やっぱり「ハッキリしたい!」という気持ちが勝ち、もし難聴と確定した場合は補聴器や今後の子育てについて考えるという次のフェーズに進もうと決心しました。
難聴児の子育てについて調べる
精密検査までの間、難聴のお子さんに素敵な子育てをしている方のブログを見つけては読みふけっていました。
すると、子育て観に共感する方、憧れる方がたくさん出てきました。
このことはわたしの思考をとても明るくして、もし難聴だったらこんなふうにしてあげようとポジティブに考えられるようになりました。
「新しい世界を見せてくれてありがとう」と夜中に息子の寝顔を見ながら言えるようになっていました
自身が両耳重度の難聴でありながら難病児の子育てをしている方のYouTubeも何度も見ました。
ここで紹介しているデフサポさんは、難聴児子育ての言葉を育てる通信教材『デフゼミ』を提供しています。
こういうのもあるなら積極的に活用したいと、気持ちは前向きに変わっていきました。
わたしはもともと「幼児への言葉の教育」に興味があったのですが、難聴児に対する言葉の教育はとても素晴らしいということも知りました。
ちなみに…。
地元の難聴サポートについて調べましたが、市内の小学校には難聴学級がありませんでした。
重度の聴覚障害であれば障がい者手帳が発行されるので補助があるけれど軽中等度だと障がい者手帳も補助も出ないとか、軽度だからこそ周りから理解されずに苦労されている方もいるなど、そういった問題点も知りました。
難聴児って1,000人に2.3人はいるのに、そういった点を日本はずっと見直しもせず、世間での認識も遅れているなと感じました。
こういう出来事がなければ目を向けなかったと思います
やらないほうがいいこと
赤ちゃんが聞こえているかどうかを確かめるためにわざと音を出して試すのはやめたほうがいいです。
心がすり減ります。
わたしは毎日やってましたが…!
0カ月の息子はピアノで爆音を出そうがとなりで姉が泣きわめこうがスヤスヤ寝ていました。
わざわざアプリで音の大きさを計れる騒音計を用意して、何デシベル(dB)だったら反応するかを測ったりしました…。
でも素人ではなにがなんだかわからなくなるだけです!
新生児聴覚スクリーニング検査両耳リファーからの精密検査
夫が単身赴任で近くにいてもらえなかったので、精密検査には単身で行きました。
これもまたつらかったです
個人病院も大学病院も車で2時間くらいかかるところでした。
先生には「お母さんが車で運転しないこと」とか「必ず旦那さんと来てください」とか言われましたが(平常心で運転できない可能性があるから)、そうもいかず、自分で運転して行きました。
聴覚の精密検査は赤ちゃんが眠った状態で行うので、
- 直前までぐずっても寝かせないこと
- お腹をすかせた状態にしておくこと
- 直前に授乳して検査中はよく眠らせること
を事前に説明されていました。
これがきつかった!
病院へ行くのに車のチャイルドシートに2時間乗せるので、生後1カ月の赤ちゃんはまぁ寝ますよね…。
結果やっぱり寝ちゃいましたが、なんとかなりましたよ。
同乗者さんがいる場合は、あやして起きていてもらうなどの対策ができたかと思います。
簡単な問診と耳の中をチェックしてもらった後、息子はASSRとBOAという検査をしました。
- ASSR(聴性定常反応)…話しことばの聞き取りに必要な周波数(500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz)についてのより詳細な聴力検査
- BOA(聴性行動反応検査)…タンバリンや太鼓などを鳴らして乳幼児の体の反応を見る
個人病院にて生後1カ月で精密検査
まだ生後1カ月半だったので、睡眠薬は使わずに直前の授乳で眠らせました。
生後1カ月で睡眠薬を飲ませるのは不安だったのでホッ
個人病院だったので、すぐに検査をしてくれて待ち時間も少なくてとてもよかったです。
ASSRでは、最初床にタオルを敷いてもらい眠らせたのですが、ぐずってしまうので息子を抱っこした状態で検査をしてもらいました。
ミルクをたっぷり飲ませると幸いスヤスヤ寝てくれたのですが、途中オムツを替えたりムズムズして起きっちゃったりしたのをまた寝かしつけて、抱っこの状態で2時間がんばりました。
すごいヒマでした。笑
1時間くらいかなと勝手に思っていたのですが、想像以上に時間がかかったので勝手に不安になっていました。
ASSRが終わったころにちょうど息子が目を覚ましたので、そのままBOAを実施。
言語聴覚士さんがいろんな角度から太鼓やタンバリンや笛を鳴らして反応を見てくれたのですが、わたしの素人目からはまったく反応していなくて…
やっぱり聞こえていないんだろうな
と思いました。
これはすぐに終わり、「うん、わかりましたよ」と言われ、結果は告げられる待合室で待つことに。
この待合室では、結果がどうであれ息子に愛情いっぱいの子育てをしてあげればいいだけだと、どんな事実も受け入れる覚悟ができていました。
少し待って呼ばれ、覚悟をもちながら診察室で先生の話を聞きました(関係ないけど女医さんでした!)。
先生の話
結果的に言うと、聞こえています。
どうして新生児聴覚スクリーニング検査であんなに結果がでなかったかは、ちょっとわからない。
今回は周波数ごとに耳の聞こえを脳波でチェックしました。
とくに高い周波数はよく聞こえていて、10dB(デシベル)というごく小さな音も聞こえている状態です。
たしかに、低い周波数になると左耳は30dB以上からの反応が見られます。
ちょっと聞こえづらいかもしれませんが、まだ生後1カ月ですし正常範囲内でしょう。
もし左耳は低い音が聞こえづらいとしても、スピーチバナナ(*)の領域はちゃんと聞こえているので、言語習得に問題は見られません
なんと、両耳とも聞こえているという結果でした。
聴力レベル(dB)については冊子をいただき、そちらの表がとても参考になりました。
スピーチバナナとは、言葉の発音に関連する領域のことです。下の図の黄色の部分です。バナナのような形なのでそう呼ばれています。
ここにきて聞こえているという判断だったので、ビックリしながらも、この1カ月の間いろいろと難聴児の子育てについて勉強をして受け入れていたので、まさかの結果に複雑な気持ちでした。
「よかった」とか「うれしい」という気持ちは不思議となく、「あ、そうなんだ…」とただ受け入れた感じです。
わたしがすてきだなと思ったのは、この結果を話す先生がけっして「よかったですね」というようなことを言わなかったことです!
たくさんの難聴のお子さんやその親御さんと誠意をもって接していることがわかります。
難聴はけっして残念ではないし、健聴だから良いというものではないというのが、そのときは心から思えていたのだと思います。
このときの心情はうまく言えないけど、ほんと不思議な感じでした…
大学病院にて生後4カ月で診察
これまでの間、息子は生後3カ月を過ぎたころから音に反応するような様子を見せるようになっていました。
音の鳴るオモチャを好んで手に取って遊び、テレビの音がなると顔を向けるようになりました(毎回ではなく、そういうときがある)。
もう検査しなくてもいいのではと思い大学病院には連絡を入れ、生後1カ月の検査結果をFAXして送りましたが、「予定どおり検査を行うので来てください」という回答でした。
大学病院は個人病院とくらべて混み具合がまったくちがいました。
行くまでに1時間半かかったうえにそこから駐車場に入るのに45分かかりました…。
息子は検査のためにミルクをもう4時間以上飲んでいないので超絶不機嫌!!
さらに長い時間待ち…。
泣く赤ちゃんを待合室であやしながら、とっても大変でした
そして、やっと検査してもらえると思ったのですが…
結果、検査してもらえませんでした!!
生後1カ月で精密検査を受けて間もないので、急激に結果が変わることはないし、睡眠薬も赤ちゃんの負担になるのでやめましょうとのことでした。
最初の電話で言ってくれよ~
問診と耳の中のチェックをしてもらい終わりました。
お医者さんも看護師さんもすごーく優しく、泣いている息子をあやしてくれました。
「生後1カ月でこの結果が出ているなら、よっぽどのことがない限り今から難聴の診断となることはないと思う」と言ってもらえました。
次回は生後6カ月で診察となりました。
大学病院にて生後6カ月で精密検査
このころには、乳幼児聴覚発達リスト(※)を注意して観察していたので、息子の耳が聞こえていることに確信をもっていました。
前回と同じように通院時間と駐車場待ちで2時間半くらい費やし、大学病院へ行ってきました。
息子は幸い睡眠薬のシロップをすごく上手にペロペロと飲んでくれ、その後ミルクを飲ませると泥のように寝てくれました。
今回は同席はできなかったので、わたしは大学病院内のカフェで1時間半ほど待ちました。
思えば、生まれてこんなに離れたのは初めてかも!?
その後、呼ばれて先生からお話を伺いましたが、やはり生後1カ月の精密検査と同じ結果でした。
- 高い音域がとてもよく聞こえている
- 低い音域は左耳が30dBと少し聞こえづらいかもしれない
- 言語習得には問題のない正常範囲内である
「今後追跡調査をする必要もないし、普段の生活をしていて『あれ?聞こえづらいかも?』と思ったら連絡してください」とのことでした。
こうして、生後2日で新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになってから、生後6カ月で精密検査でパスするまでの息子の難聴疑い騒動が終わりました。
すごく長かった…
新生児聴覚スクリーニング検査両耳リファーでつらかったこと
新生児聴覚スクリーニング検査でリファーを受けて、何がつらかったのかを振り返ってみました。
それはなにより、息子が難聴かもしれないと言われて自分ばかりを責めていたことです。
というのも、妊娠中に副鼻腔炎(蓄膿)が発症して立てないほどの頭痛になり、レントゲンを撮って抗生剤で治療をした時期があったからです。
もちろんそのときのお医者さんには妊娠中である旨を伝え、対処してもらいました。
ですがいつも「あれが原因ではないか」と自分を責めていました。
また、夫が単身赴任中でワンオペ×お姉ちゃんがイヤイヤ期という妊娠期を過ごしたので、妊娠中に自分の体調を気遣うことができませんでした。
大きいお腹でイヤイヤするお姉ちゃんを抱きかかえるのは毎日のことでした。
こういった先天性の障がいを赤ちゃんが持っているかもしれないとなったとき、お母さんは漏れなく自分を責めるんじゃないかなと思います。
そして、赤ちゃんが生まれたばかりなのに向き合えないこともつらかったです。
いわゆる「普通」の悩みをもっている人を見られませんでした。
いわゆる普通の新生児期の悩み
- 寝ない
- ミルク・母乳を飲まない
- 物音で起きてしまう(←とくにうらやましかった)
同時期に生まれた赤ちゃんのお母さんのSNSを見られず、ふさぎ込んでいました。
正直、だれとも連絡をとりたくなかったです
胎教としてお腹の赤ちゃんに話しかけてきたことも、すべて聞こえなかったかもしれないと思うと悲しくて涙が出ました。
とくに出産時は、陣痛時もお腹の赤ちゃんにたくさん話しかけて、赤ちゃんとの共同作業で一緒にがんばって生んだという感覚があったので、「あれは勘違いだったのかも」と思うとつらかったです。
お母さんの声届いているかな…聞こえていないかもしれない…
と思うと、目の前にいる赤ちゃんにうまく話しかけられないこともありました。
「赤ちゃんにたくさん語りかけてあげてください」と、ろう学校の先生に言ってもらえなかったらずっと黙って新生児育児をしていたかもしれません。
また、息子が難聴である場合に健聴児であるお姉ちゃんに与える影響や自分の仕事を辞めるかどうかなど、起こってもいないことをあれこれ悩んでいました。
今考えたら無駄なエネルギーだったけれど産後って本当にメンタルがやられるのです
新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーになった人へ
結果、難聴じゃなかったから言えるんだ!
と言われてしまうかもしれません…。
でも、新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーとなった親御さんにわたしはこう伝えたいです!
- 専門家や経験者に相談してみて
- 今しかない新生児期を本当に楽しんで
- 先のことを心配しすぎないで
専門家や経験者に相談してみて
1人で悩まず、話を聞いてもらえるだけで本当に楽になります。
生後6カ月まで訪問してもらっていたお世話になった助産師さんがいたのですが、その助産師さんも娘さんが新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーとなっていたと教えてくださいました。
その方のプライベートな内容なのでここには書きませんが、その助産師さんに話を聞いてもらうだけで気持ちが晴れました。
生後2週間で訪問してくださったときには、2人で話しながら大泣きしました。笑
自分の思っているモヤモヤを断ち切ろうとするんじゃなくて感じ切っていいんだよ、と言ってもらえたのが大きかったです。
なかなか経験していないとわからない気持ちだと思うので、経験者や専門家に話を聞いてもらってくださいね。
まわりに経験者がいない場合は、ろう学校に相談してみるのがいいと思います。
よかったらわたしが話を聞きますよ!
今しかない新生児期を本当に楽しんで
わたしはたくさんの方にこのアドバイスをいただいたのですが、実行できませんでした。
今思えば、息子の新生児期の記憶がほとんどないんです。
新生児期にしか感じられない赤ちゃんの匂いとか、抱っこしたときの軽さとか、そういった一瞬一瞬を楽しんでほしいです。
先のことを心配しすぎないで
まだ起こってもいない先のことを心配しすぎるのは本当に無駄なエネルギーを消費する行為でしかありません。
子育てで大切なことは「今」に目を向けることです。
「今」を楽しみ、物事を良い・悪いでジャッチしないで子どもに向き合う。
これができればだいぶ心が軽くなります。
わたしは息子にこの大切なことを教えてもらったと思っています
新生児聴覚スクリーニング検査の両耳リファーから精密検査パスのまとめ
息子の難聴疑いの一連の出来事は、わたしにとっていいこともたくさんありました。
耳の聞こえづらい世界という知らない世界を知るキッカケとなりました。
たくさんの方に出会い、話を聞き、「息子はこの世界をわたしに教えてくれるためにこうして生まれてきたんだ」と本気で思いましたし、今もそう思っています。
息子が「耳が聞こえている」という診断をもらってからも、補聴器をつけている子どもや難聴者に対するサービスをよく見かけるようになりました。
そして、わたしの住んでいる地域に難聴学級がないように、日本は難聴児にとって育ちやすい環境とは言いづらいことも知りました。
この一連の出来事で受け取った「今を大切にして目の前の出来事を良い・悪いでジャッチしない」というわたしへのメッセージは、今もわたしの子育ての軸となっています。
新生児聴覚スクリーニング検査でリファーになると、難聴にしろ健聴にしろ、確定までにおおくの時間を要します。
その間、リファーをもらった家族はモヤモヤとした霧の中で過ごすことになると思います。
わたしは比較的早い段階で精密検査を受けて耳が聞こえていると診断してもらうことができました。
ですが、確定するまでに3カ月~6カ月かかることもあります。
わたしは当時、新生児聴覚スクリーニング検査で両耳リファーとなりその後精密検査でパスとなった子の事例をネットで検索しましたが、あまり見当たりませんでした。
そんな不安な期間を過ごしている方に向けて、今回記事をまとめました。
わたしの体験談が少しでも役に立てればと思っています
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